薬の副作用によって引き起こされる「薬物性歯肉増殖症」を知っていますか。今回は薬物性歯肉増殖症について、原因や症状、治療法などを詳しくお伝えします。

薬を常用している人で歯ぐきに腫れを感じている場合は、ぜひご一読ください。

薬物性歯肉増殖症とは？

薬物性歯肉増殖症は、常用薬の副作用により歯肉（歯ぐき）が腫れてしまう病気です。歯肉がわずかに腫れる程度のこともあれば、歯が隠れて見えなくなってしまうくらいひどく腫れることもあります。細菌感染による腫れではないので、抗菌薬では改善しません。

薬物性歯肉増殖症の症状

薬物性歯肉増殖症の症状について、時系列に沿って見ていきましょう。

初期症状

まず、歯と歯のあいだ（隙間）の歯肉が腫れます。歯肉炎や歯周病と異なり、痛みがない場合も多く、初期段階では気がつきにくいのが特徴です。

進行した場合の症状

放置していると腫れた部分が歯肉全体へと広がります。薬物性歯肉増殖症の場合、炎症による腫れではなく、歯肉の内部にある線維芽細胞という結合組織が増殖することで歯肉が腫れます。

線維芽細胞はコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸といった成分を作り出す組織であるため、腫れた歯ぐきは硬く弾力がある状態です。

重症化の症状

さらに重症化すると、歯が見えなくなるまでに歯肉が腫れ、歯を覆ってしまうことがあります。ここまで重症化すると、見た目にも異変がわかる状態です。

歯肉が腫れるだけでなく、腫れた歯肉に歯が押され、歯の位置がずれたり歯並びに影響したりする場合もあります。また、口のなかの衛生を保ちにくくなることにより、歯周病などが併発するケースも少なくありません。腫れた部分が化膿し、歯肉から血や膿が出てしまうこともあります。

どんな薬が歯肉増殖を起こす？

原因となりやすいと言われている主な薬には、下記のようなものがあります。

特に、「フェニトイン」を服用している人や上記の薬の服用量が多い人、若い人は、薬物性歯増殖症の症状が出やすいと言われています。

ただし、ここに挙げた以外の薬が原因になることもありますし、上記の薬を服用した人に必ず症状が出るとは限りません。個人差がある点は頭に入れておきましょう。

薬物性歯増殖症の治療法

ここからは薬物性歯増殖症の治療法について見ていきましょう。

薬の服用を中止

薬物性歯増殖症の原因は服用している薬なので、薬の服用を中止すれば症状が改善します。薬を処方している医師に相談し、薬の変更などを検討してもらいましょう。

とはいえ、薬物性歯増殖症の原因となる薬は、持病のために常用するものが多く、薬の変更などが難しい場合もあります。そのような場合であっても、自身の判断で服用を止めたり減らしたりすることはNGです。

医師と十分に話し合い、自身にとってよい方法を検討しましょう。

日頃からの手入れ

薬物性歯増殖症は、歯垢（プラーク）が溜まった人ほど進行しやすく、重症化もしやすいです。また、歯肉が腫れると歯みがきしづらくなり、症状が悪化しやすくなります。

日頃からしっかりとケアし、歯垢が溜まらないよう心がけましょう。毎日の歯みがきに加え、歯科医院での定期的なクリーニングも効果的です。歯科医院では、ブラッシングの方法や、フロスなどを使ったケア方法なども教えてもらえます。専門家のアドバイスを自宅でのケアにいかせるとよいですね。

▶歯の日頃の手入れについてはこちらも参考にしてください。
オーラルケアの基本！歯みがきの方法や時間、歯ブラシの選び方を徹底解説！

外科治療

服用薬の調整や日頃の手入れでも症状が改善しなかったり、腫れがひどくなったりした場合は、腫れた部分の歯肉を切除する「歯肉切除術」という外科治療が行われます。

この治療法では、患部に麻酔を注入し、硬く腫れて盛り上がった歯肉を切除します。ただし外科的に切除したからといって安心できるわけではありません。再び腫れないよう、日頃の手入れを怠らないことが肝心です。

歯肉が慢性的に腫れている方は歯科医院へ

薬物性歯増殖症の原因となりやすい薬を服用している人や、歯肉の慢性的な腫れが気になる人で、歯肉の腫れを感じている場合は、早めに歯科医院で診察を受けることをおすすめします。重症化させないためには、初期の段階で早めに対処することが大切です。

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筆者：seeker編集部