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2024/10/17
歯根嚢胞の原因と症状、早期発見と治療の重要性

歯が浮くような違和感や噛むときに歯の周辺に痛みを感じたことはありませんか?これらは「歯根嚢胞(しこんのうほう)」と呼ばれる病気のサインかもしれません。 この記事では、歯根嚢胞の原因や症状、治療法、そして早期発見・治療の重要性について詳しく解説します。早期に対応できれば歯を失うリスクが低くなるため、違和感があったらすぐに歯科医院に相談しましょう。
歯根嚢胞はどんな病気?
歯根嚢胞は、歯の根元に袋状の空洞ができ、そこに液体や膿が溜まる病気です。虫歯や歯周病による細菌感染が主な原因です。 歯根嚢胞は主に下記の流れで進行します。
- 1.虫歯が進行し、神経が炎症を起こし死んでしまう
- 2.死んだ神経が腐敗し、虫歯菌の温床となる
- 3.虫歯菌が歯根の先にまで感染し、周辺の骨が炎症し、膿がたまる
- 4.慢性化し、歯根嚢胞に変化する
- 5.歯根嚢胞内で細菌の動きが活発になり症状が現れる
もし放置して病気が進行すると、副鼻腔炎や顎の神経麻痺、骨髄炎などの深刻な合併症を引き起こす恐れが高まります。これらの合併症は、歯だけでなく全身の健康にも悪影響を及ぼすため、早期の診断と治療が非常に重要です。

歯根嚢胞の代表的な症状
歯根嚢胞の症状は、進行状態により異なります。以下のような症状が現れた場合は、早急に歯科医に相談しましょう。
歯が浮くような違和感
歯根嚢胞が進行すると、歯がしっかりと固定されていないかのような、浮いた感じの違和感を覚えることがあります。特に噛み合わせるときにその違和感を強く感じるでしょう。放置すると症状は悪化し、実際に歯自体がぐらついてしまうことも少なくありません。
噛むときの痛み
嚢胞が大きくなると、歯根周囲の組織に圧力がかかり、噛む際に痛みを感じるようになります。この痛みは軽度から激しいものまで様々ですが、食事が困難なほどの痛みというケースもあります。噛む際の痛みは、感染が深刻化している可能性を示す重要なサインです。
歯茎の腫れや痛み
歯茎の腫れや痛みも、歯根嚢胞の典型的な症状の一つです。腫れた部分は赤く、押すと痛みがある場合があります。膿が溜まることで歯茎の表面に炎症が広がり、他の歯にまで影響を及ぼす恐れがあるため、歯茎の腫れや痛みがあった場合は早めに受診しましょう。
▶歯茎の腫れについては、次のコラムもご覧ください。 歯茎が腫れている?放置してはいけない歯茎の変化
顎の腫れ
嚢胞が進行すると、顎全体が腫れることもあります。これは、嚢胞が骨や周囲の組織に広がっているサインです。顎が腫れると、顔の形が変わったり、食事や会話が困難になったりすることがあります。この状態が続くと、骨髄炎などの深刻な合併症を引き起こす可能性があります。
ニキビのようなものから膿
歯根嚢胞の感染が進行すると、歯茎や顎の皮膚にニキビのような小さな腫れができ、その中から膿が出てくることがあります。このような状態は、感染が外部まで広がっていることを示しており、早急な治療が必要です。
▶歯茎にできるニキビについては、次のコラムもご覧ください。 歯茎にできるニキビの正体は?見つけたらなるべく早く受診を!

歯根嚢胞の治療方法
歯根嚢胞の治療は、嚢胞の大きさや進行具合によって異なります。早期発見が重要ですが、進行した場合でも適切な治療によって症状を改善できます。
歯根嚢胞を早期発見できた場合
歯根嚢胞がまだ初期段階で発見された場合、通常は根管治療(歯の神経を取り除く治療)が行われます。これは、嚢胞の原因となった細菌感染を取り除くために、歯の内部をきれいにし、再感染を防ぐために充填材で密封する処置です。この治療によって、歯を残すことができるケースが多く、痛みや腫れも軽減されます。 また、歯根嚢胞の早期治療は、周囲の骨や組織に広がる前に行うため、合併症を防ぐ効果が期待できます。治療後の定期的なフォローアップが推奨され、再発を防ぐために歯の健康状態をしっかりと管理することが重要です。
歯根嚢胞が進行していたなどの場合
もし歯根嚢胞が進行していた場合や大きな嚢胞が形成されている場合、嚢胞摘出手術などの外科的処置が必要になることがあります。
嚢胞摘出手術は、感染した嚢胞部分を直接取り除き、周囲の健康な組織への感染拡大を防ぐ手技です。
嚢胞が大きくなった場合、抜歯を伴う可能性もあります。治療後には嚢胞の再発を防ぐためのフォローアップが重要です。
歯根嚢胞は放置すると顎の骨や他の組織にまで悪影響を及ぼすため、症状が現れたら早めに専門医の診察を受けることが大切です。

歯根嚢胞は早期発見、早期治療が大切
歯根嚢胞は、初期の段階では自覚症状がほとんどないことが多いため、気づかずに放置されてしまうことがあります。しかし、痛みや違和感、歯茎の腫れなどの症状が現れたときには、すでに進行している場合が少なくありません。
早期発見するためには、定期的な歯科検診が非常に重要です。歯根嚢胞はレントゲン検査で確認できることが多いため、検診を怠らなければ症状が出る前に病気を発見できる可能性が高まります。もし嚢胞が早期に見つかれば、根管治療などの保存的な治療で完治することが期待でき、歯を抜かずに済む場合も多いです。
また、早期治療によって、合併症のリスクを抑えることができます。歯根嚢胞を放置すると、顎の骨や他の歯、さらには全身の健康にまで影響が及び、副鼻腔炎や骨髄炎といった深刻な合併症を引き起してしまうでしょう。症状が軽いうちに治療を受けることで、こうしたリスクを回避し、健康な口腔環境を保つことができます。
そのため、少しでも違和感を覚えたらすぐに歯科医に相談し、定期的な検診を怠らないことが、歯根嚢胞からくるトラブルを未然に防ぐカギとなります。
筆者:seeker編集部