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2021/12/21
在宅介護中でも歯科治療はできる
全身の健康のためには、お口の健康がとても重要です。年をとっても、寝たきりでも口腔ケアや歯科治療は欠かせません。とはいえ、在宅介護中に歯科治療なんて難しそうというイメージがあるかもしれません。 在宅介護中に歯科治療をしたい時に頼りになるのが訪問歯科です。訪問歯科や、在宅介護中に家族ができる口腔ケアについて見ていきましょう。
在宅介護中、家族ができる口腔ケアは?
どうして介護中の口腔ケアが重要?
口腔ケアのメリットは多くありますが、大きいものとしては誤嚥性肺炎の予防が挙げられます。誤嚥性肺炎は飲み込む力や噛む力が衰えることで起こりやすくなります。 誤嚥性肺炎が起こると入院せざるを得なくなり、認知症が進んでしまう恐れが大きくなります。認知症が進むことで口内の健康状態の悪化や、口周りの筋力低下につながってしまい、誤嚥性肺炎を繰り返すという負のループに陥ることも少なくありません。 口腔ケアは口内の清潔を保つだけでなく、口の筋肉の衰えを予防する効果もあります。健康を長く保つためにも、介護中も口腔ケアを心がけましょう。
在宅介護中に本人や家族ができる口腔ケアは?
在宅介護中でも本人、あるいは家族でも口腔ケアは可能です。まず基本となるブラッシングは、歯ブラシ選びが重要です。歯ブラシのブラシ部分は小ぶりで、ブラシの固さが【やわらかめ】のものがおすすめです。お年寄りになると手先の力加減が上手くできなくなるので、あまり固い毛先や大きなブラシの歯ブラシだと、ブラッシング中に口内を傷つけてしまう恐れがあります。 またブラシ部分が小さい方がすみずみまで磨きやすいですよ。持ち手は太めの方が持ちやすいことが多いようです。入れ歯は部分入れ歯にせよ総入れ歯にせよ、必ず1日1回は入れ歯専用洗浄剤を使って汚れを落としましょう。入れ歯は虫歯にこそならないものの、食べかすや汚れによって細菌が繁殖してしまうため、丁寧に手入れをするようにします。 寝たきりだったり、口をゆすげない状態の場合は介助者が口腔清拭をします。口腔清拭とはスポンジブラシやガーゼなどで口内の汚れをぬぐい取ることです。力を入れすぎると口内を傷つけてしまう可能性があるので、優しくふき取っていきましょう。
プロの歯科医師でなければできない口腔ケア
口内の健康を保つためには自宅での毎日の口腔ケアが必要になりますが、治療を含めてプロの歯科医師でなければできない口腔ケアもあります。歯周病や虫歯の診察や治療は当然歯科医師でなければできません。 また、歯科医師や歯科衛生士が行うプロフェッショナルケアも口内の健康を保つために欠かせません。プロフェッショナルケアでは歯石の除去や高濃度フッ素塗布などを行います。しかし、要介護者を一般の歯科医院に連れて行くのは大変ですよね。 そこで利用したいのが訪問歯科です。訪問歯科を依頼すれば、家に居ながらにして治療やプロフェッショナルケアを受けることができます。
訪問歯科を手配するにはどうすればいい?
開業している歯科のなかで訪問歯科も行っている歯科医院もあれば、訪問歯科専門の歯科医院もあります。すでに依頼したい訪問歯科医院が決まっているのであれば、直接連絡をしても構いません。 どの訪問歯科にするか決めかねている、あるいはまったく訪問歯科のあてがないという時には担当のケアマネージャーなど地域の介護情報について詳しい人に相談すると地域の訪問歯科を紹介してもらうことができます。治療費は介護認定を受けている人であれば訪問歯科の利用は介護保険が適用されます。 1ヶ月あたりの受診回数や上限金額は訪問歯科や担当のケアマネージャーなどに確認してみてください。多くの訪問歯科は予約優先で「歯が痛いからどうしても今来てもらいたい」という緊急対応をお願いしても家に来るまで時間がかかってしまいます。だからこそ在宅介護中も訪問歯科から定期的に口内の状態を見てもらい、虫歯や歯周病が悪化して痛みが出る前に処置を受けられるようにしましょう。
介護中の家族自身の口内ケアも大切に
ここまで介護を受けている方向けの口腔ケアや歯科治療の方法をまとめました。一方で、介護をしている側の人もできるだけ定期的に歯科医院でプロフェッショナルケアを受けることが大切です。介護中は自分の時間を取りにくい場面もあるでしょうが、介護をする人たちが健康だからこそ在宅介護は成り立ちます。デイサービスやショートステイなどを利用して、家族自身も歯科医院を定期受診できるような環境を整えていけるといいですね。
筆者:seeker編集部