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投稿日:2025/08/18
更新日:2026/03/16
歯医者で噛む力が強いと言われたら?歯や顎に起こるトラブルと対処方法
詰め物がよく取れる、朝起きると顎がだるいなどの症状や、歯医者で「歯ぎしりしてるかも」と言われたことなどはありませんか?実はこれらの症状は、噛む力(咬合力)が強すぎることが原因になっているかもしれません。
噛む力が過剰だと、歯や詰め物、顎関節はもちろん、歯ぐき・神経にまで影響を及ぼすかもしれません。
この記事では、噛む力が強いことで起こるトラブルとその対処法について解説します。
▶歯ぎしりについては、こちらのコラムをご覧ください。 歯ぎしりが体に及ぼす7つの悪影響とその対策
普段意識しない噛む力について
物を噛むときに歯にかかる力のことを咬合力(こうごうりょく)と言います。成人の正常な咬合力は50〜80kgと非常に大きいです。通常の食事や会話では自然とセーブしているため問題ありませんが、全力の咬合力をたびたび出してしまうと、歯や顎に思わぬ負担を与えることがあります。
特に注意が必要なのが、睡眠中の歯ぎしりや日中の食いしばりといった無意識の動作です。自覚がないまま強い力が継続的に加わり、歯の摩耗や顎の違和感、詰め物の脱落などを引き起こすケースが多く見られます。
実際に歯科医院で噛む力が強いとお伝えする患者さんには、以下のような特徴が見られます。
これらの症状は一見関係がないように思えるかもしれませんが、実は咬合力の影響が隠れている可能性も高いです。
顎のだるさや頭痛などをただの癖や体質と片づけず、口腔内の状態や噛み合わせにも目を向けてみましょう。

噛む力が強すぎることで起こる3つのデメリット
咬合力が強すぎると、さまざまな部位にトラブルが生じます。ここでは、よくある3つの代表的なデメリットについて紹介します。
① 歯や詰め物のトラブル
強い咬合力は、天然の歯を破折させたり、詰め物や被せ物の脱落などのトラブルを引き起こす原因です。特に、過去に治療した歯は健康な歯よりも構造的に弱いため、噛む力に耐えきれず、小さなヒビが入ったり、歯根が割れることもあります。
同じ場所の詰め物が何度も外れたり、治療したはずの歯がまた痛んだりする症状がある場合、単なる治療不良ではなく、咬合力の偏りや過剰な圧力が関係している可能性が高いです。
また、強い食いしばりなどによって歯がすり減ることで、かみ合わせが変わり、噛むバランスが崩れていく悪循環にもつながります。
② 顎関節症のリスク
咬合力の影響は、歯だけではなく顎の関節(顎関節)にも大きな負担がかかることがあります。特に、注意したいのが、歯ぎしりや片側だけで物を噛む癖です。これらの習慣があると、顎を左右均等に動かすことが難しくなり、顎の動きが偏ります。
このようなバランスを欠いた動きが続くことで、顎関節そのものにズレが生じたり、関節まわりの筋肉に過度な緊張が生まれ、顎関節症と呼ばれる症状へと発展してしまう可能性があります。
顎関節症の主な症状には、
などがあり、日常生活に支障をきたすほど悪化するケースもあるでしょう。
このような症状に心当たりがある場合、ただの疲れではなく噛み合わせの問題が関与している可能性が高いです。
③ 歯ぐきや神経のトラブル
咬合力が歯ぐきや神経に影響することも見逃せません。
たとえば、噛む力が偏ってかかることで、歯を支える歯根膜や歯槽骨に炎症や損傷が起こることがあります。特に歯周病を抱えている方にとっては、強い咬合力が歯のぐらつきを加速させ、最終的に抜歯に至ることもあります。
また、根管治療をした歯は神経がないため感覚が鈍くなっていて、無自覚のうちに力がかかりすぎて歯根破折になる例も少なくありません。
一見すると歯が痛い、詰め物がしみると感じる違和感の背景には、咬合力による深部のトラブルが潜んでいることもあるのです。

噛む力が強い影響で起こる症状の対処法
強すぎる咬合力によるトラブルは、放っておくと悪化する一方です。ここでは、歯科医院で行われる代表的な3つの対処法をご紹介します。
ナイトガードの装着
就寝中の歯ぎしり・食いしばりに有効なのが、ナイトガード(マウスピース)です。これは、寝ている間の咬合力を分散させることで歯や顎を保護する装置で、歯ぎしりによる摩耗や詰め物の脱離を防いでくれます。
ナイトガードは市販のものもありますが、歯科医院で作るものは自分の歯並びにぴったり合い、装着感も優れています。特に歯ぎしりが疑われる方や、朝起きた時に顎が疲れていると感じる方は、歯科医院で相談してみましょう。
咬合調整
かみ合わせのバランスが悪く、一部の歯に力が集中している場合は、咬合調整が行われます。これは、咬合紙と呼ばれる紙を使って噛み合わせの高い部分を確認し、歯の表面を削り、調整することで、咬合力を全体に分散させる方法です。
力のかかりすぎている部分を調整することで、力の偏りを減らし、詰め物の破損や顎の負担を軽減できます。
たとえば銀歯を入れてから顎が疲れる、特定の歯だけ浮いている感じがするなど、些細な違和感がある場合は歯科医院で相談しましょう。
生活習慣の見直し
噛む力を強くする要因は、日常のストレスや身体の使い方にも関係しています。特に、仕事中に無意識に食いしばっていたり、スマホを見ながらうつむく姿勢が続いたりすると、首や肩の緊張から咬合にも影響が及びます。
また、寝具や寝姿勢、合わない枕なども顎関節に負担をかける原因となるため、噛む力=歯の問題だけではないという視点を持つことが大切です。
さらにリラックスできる時間を作ったり、ストレッチを取り入れることで、咬合トラブルの再発予防にもつながります。

噛む力が強い人は要注意!放置せず、早めの対策を
噛む力が強いと言われても、自覚症状がないうちは軽く考えてしまいがちです。しかし実際には、慢性的な咬合力の負荷が、歯や顎に大きなダメージを与えることもあります。
「同じ歯の治療を繰り返している」、「なんとなく噛みにくい・顎がだるい」
そんなサインを見逃さず、歯科医院で咬合のチェックを受けることが、未来の歯を守る第一歩になります。
咬合力は目に見えて異常がわかりにくいですが、早期に気づき、対策を講じることが何よりも大切です。
本記事で紹介した内容に少しでも思い当たることがある方は、そのままにせず一度歯科医院で相談してみましょう。
筆者:seeker編集部
監修者・コメント
歯科医師
都内歯科医院勤務
三宅 友紀 先生
噛むときに歯にかかる力は「咬合力」と呼ばれ、無意識の歯ぎしりや食いしばりによって過剰に負荷がかかることがあります。強い咬合力が続くと、歯の摩耗や破折、詰め物・被せ物の脱離、顎関節への負担などにつながる場合があります。
また、歯周病がある場合は歯を支える組織への負担が増え、歯の動揺が進行することもあります。症状がある場合には、噛み合わせの確認やナイトガードの使用など、歯科医院で適切な対処を検討することが大切です。

























