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2022/06/07
「口が開かない」「開けるときに痛む」これって顎関節症?

口を大きく開けにくい、痛くて硬い食べ物を噛めない、あごを動かすとポキポキと音がする…といったことはありませんか?これらの症状を総称して、「顎関節症」と言います。顎関節症とは、顎の骨・関節やその周りの筋肉、関節円板や靱帯などの異常によって起こります。 現代の日本人に多い病気で、軽度な場合や、あごを動かしたときに音が出るだけで他への影響がない場合は、治療はしないことも多くなってきています。今回は、顎関節症の主な原因や症状、注意点などをご紹介します。
顎関節症の主な症状とは?
開口時痛
あごを使いすぎたり、強く噛みすぎたりした時に起こる症状です。口の開閉時や噛む際に下あごの関節部分(下顎頭)が動くことで、痛みが発生することがあります。これは、咀嚼筋と言われる咬筋、側頭筋などが活動することによって起こる筋痛です。
開口障害
通常は、口は縦に40mm程度(人差し指から薬指までの指3本分)開きます。口の開きが40mm以下の場合は、顎関節や咬筋と呼ばれる咀嚼筋に何かしらの問題があると考えられます。 開口障害の原因として、筋性・関節円板性・癒着性があります。何の前兆もなく急に開かなくなったときは、関節円板の転位によるものだと考えられます。関節円板がずれることによって顎関節の元々の可動域がせまくなり、口を大きく開けづらくなっている場合があります。徐々に開かなくなっていく場合は、筋性によるものだと考えられます。 開口障害の原因を診断することは容易ではありませんが、下あごが正常に前に出せるかどうかを調べ、出せるのであれば、口を最大限開けたときに左右どちらかの咬筋が強くこわばっているかどうかを診てもらいます。下あごが動かしづらい場合は関節円板性、癒着性である可能性が高く、下あごは動くが口が開きづらい…という場合には筋性が疑われます。
関節雑音
関節雑音は、クリック音とクレピタス音に大別されます。軽度な場合は放置してしまうこともありますが、悪化すると口が開かなくなる開口障害に発展する可能性があるため、注意が必要です。
食いしばりやガムの噛みすぎにも注意!
顎の使い過ぎ
ガムを噛むと、脳への血流が多くなって健康に良いという説もあります。ただし、ずっと噛み続ける、片側の歯だけで噛む、強く歯を打ち付けるように噛む…といったことは、顎の関節に良くありません。顎や咀嚼筋群に余計な負担をかけ続けると、それらの筋肉や関節が疲れてきて、顎関節症の発症リスクが高まるからです。 また、噛みすぎることで歯がすり減ると、嚙み合わせにも影響が出てきてしまいます。

顎の炎症
「無理矢理大きな口を開ける」「固い食べものをたくさん食べる」「歯ぎしりやくいしばりをする」ことが原因で、顎が炎症を起こすことがあります。これは、顎関節周辺にある軟組織の、細菌感染のない炎症です。炎症の度合いによって痛さも比例します。 顎関節は耳の穴の近くにあるため、耳の痛みだと勘違いして耳鼻咽喉科を受診する方も多いようです。あくびをなるべく控える、固いものはしばらく食べないようにする、食事は小さくカットしてあまり大きく口を開けないようにするなど、できるだけあごを動かさないようにして過ごします。
関節円板の異常
関節円板とは、上あごと下あごの間にあるクッションのような役割をする組織です。円板の位置がずれてしまって、口を開けるとクリック音などの関節雑音がでてきます。 「関節雑音」だけの症状の時は、特に治療は必要ありません。ただし、関節円板のずれが悪化すると、急に関節雑音が消えて口が開きづらくなります。その時は、通常マウスピース治療を行ないますが、十分な効果が得られない場合には、歯学部付属病院の顎関節専門外来などで、専門的な検査や治療を受けることがあります。
パソコンやスマホで固まった関節が原因で起こることも
上記のような生活習慣が原因で肩や首回りの血行が悪化すると、あごの関節も血行が悪くなり、顎関節症の痛みが起きやすくなります。

また、姿勢が悪いことで首に負担がかかり、顎関節に悪い影響を及ぼします。さらに、血行が悪くなると咬筋・側頭筋などの筋肉が固まって伸び縮みしにくくなり、動きが悪くなります。加えて、光の刺激による影響もあります。光刺激を伝える神経を使いすぎると、神経のつながりにより顎関節の神経まで使いすぎてしまい、顎関節の動きの調節がうまくできなくなります。 現代において、パソコンやスマホといったツールの利用を完全に避けることはなかなか難しいことです。夜の使用はなるべく避ける、長時間連続にならないよう気を付けるなど、できる範囲で心がけることが大切です。
どの治療法も、専門の歯科医師の診断の上で行うことで、間違った自己判断による悪化を防ぎます。
まずは歯科を受診しよう
顎関節症の原因や症状についてご説明しました。日常生活に影響がないからといって症状を放置してしまうと、悪化する可能性があることはもちろん、全身に影響がでてしまうこともあります。また、他の病気が原因の場合もあります。「顎関節症かな?」と思ったら、自己判断せずに歯科を受診しましょう。
筆者:seeker編集部