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2024/11/21
歯医者で使う麻酔の種類とは?治療別に解説
患者の痛みを軽減し、治療をスムーズに進めるために歯科医院でたびたび使われる麻酔。いくつかの手法があり、それぞれ特徴や効果が異なります。 本記事では、歯医者で使われる麻酔の手法の種類についてや、治療内容ごとに適した麻酔の使い方などを解説します。麻酔についての理解を深め、治療を受ける際の不安を少しでも和らげましょう。
歯医者で使用する主な麻酔の種類
歯医者で使用される麻酔の手法は、大きく分けて3種類あります。それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
鎮静法
鎮静法は、患者の意識を少しぼんやりさせ、リラックスさせる麻酔方法です。完全に意識を失ったり、完全に痛みを感じなくなったりはしませんが、半分眠ったような状態になるため治療への緊張感が軽減するというメリットがあります。
この麻酔方法は、歯の治療に対する恐怖感や不安が強い方に対し効果的です。
鎮静法には笑気麻酔や静脈内鎮静法などがあります。
局所麻酔
局所麻酔は、歯科治療で最も一般的に使用される麻酔方法で、治療部位の周囲の感覚を一時的に失わせて痛みを感じないようにする方法です。局所麻酔の注射は、歯茎や顎の周辺に直接行われ、数分で効果が現れます。 効果は数時間続き、治療後もしばらくしびれを感じることがありますが副作用は比較的少なく、安全性が高い方法とされています。
全身麻酔
全身麻酔は、大規模な手術や複雑な治療で使用される、患者を完全に眠らせる方法です。麻酔科医の厳密な管理のもと実施されます。 患者が完全に意識を失い、治療中の痛みや恐怖感を一切感じないことがメリットですが、リスクも伴うため、慎重に検討されることが多く、適切な状態管理が求められます。
▶麻酔の種類について詳しく知りたい方は、次のコラムもご覧ください。 歯医者さんでの麻酔の種類はどんなものがある?
歯医者での治療内容に応じた麻酔の使い分け
歯科治療では、治療内容に応じて最適な麻酔方法が選ばれます。それぞれの治療に合わせた麻酔方法が使われる理由や効果について詳しく見ていきましょう。
虫歯治療
虫歯治療では、虫歯の進行具合によって麻酔の必要性が変わります。 初期の虫歯であれば、麻酔を用いずとも痛みを感じることなく治療できる場合もあるでしょう。しかし、患者によって痛みの閾値が異なるため、希望に応じて軽い局所麻酔を使用することもあります。 神経に近い部位や深い虫歯の治療では、痛みが激しくなる可能性が高いため、しっかりとした局所麻酔が必須となります。麻酔が効いていることで、患者は治療中にリラックスし、恐怖感を感じずに済むでしょう。 状況に応じて局所麻酔を使用することで、治療がスムーズに進み、患者が痛みによるストレスを感じないように工夫されています。
歯の神経治療
歯の神経治療は、虫歯が神経にまで達してしまった場合に必要となる処置です。治療の過程で歯の内部にある神経や感染した組織を取り除きますが、歯の内部の神経に直接触れる治療となるため、麻酔を用いなければ非常に強い痛みが伴います。
神経治療では、治療部分の感覚を一時的に消失させるために局所麻酔が使われます。この麻酔は、歯の根の深い部分の神経までしっかりと効くため、痛みを感じさせません。患者は麻酔が効いている間、落ち着いて治療を受けられるでしょう。
神経治療は長時間に及ぶことが多いため、途中で麻酔の効果が薄れる場合には再度注入することもあります。これにより、痛みを感じることなく、最適な治療が行われるのです。
神経治療においては、麻酔の効きが治療の成功と患者の快適さに直結するため、十分な量と持続性が求められます。
歯周病治療
歯周病の治療は、歯茎やその周囲の組織に対する処置のため、痛みを伴うケースが多いです。特に進行した歯周病の治療には、専門的な外科的アプローチが必要になることも多いでしょう。
歯周病の初期治療の一つである、歯の根を滑らかに整える「ルートプレーニング」では、局所麻酔を用いて痛みを抑え、患者が不快感を感じずに済むようにしています。
重度の歯周病では、歯茎を切り開き、より深い部分を清掃する「フラップ手術」が実施されることが多いです。局所麻酔をしっかり効かせてから処置を開始し、手術中に痛みを感じないようにします。
麻酔がしっかりと効いていると、歯周病治療がより正確かつ快適に進行し、治療後の回復もスムーズになるでしょう。
親知らずの抜歯
親知らずの抜歯は生え方などによっては非常に複雑な手術となるため、状況に応じた適切な麻酔の選択が重要です。
一般的な親知らずの抜歯では、局所麻酔を使用します。麻酔により、抜歯時に感じる痛みや圧迫感をすべて取り除くことが可能です。患者は、痛みを感じることなく治療が進むため、手術に対する恐怖感が軽減されます。
親知らずが真横に倒れているなど難しい位置に生えている場合や、骨に埋まっている場合は、歯茎を切開したり、骨を削ったりする必要があり、手術の難易度が上がります。その場合は局所麻酔に加えて鎮静法を併用する場合もあります。これにより、患者は半分眠ったようなリラックス状態になり、恐怖感を感じることなく治療を受けることができます。
親知らずの抜歯は、痛みと不快感を最小限に抑えるために、麻酔の効き方や量が慎重に調整されているのです。
インプラント治療
インプラント治療は、人工の歯根を顎の骨に埋め込む手術であり、時間がかかることが多いため、しっかりとした麻酔管理が必要です。
インプラント手術では、局所麻酔が基本的に使用されます。これにより、手術部位の感覚が無くなるため、患者は痛みを感じることなく手術を受けることができるでしょう。特に骨にドリルを使用する際の痛みを防ぐために麻酔は不可欠です。
手術が数時間に及ぶ場合や、患者が強い不安を感じている場合には、静脈内鎮静法を併用することがあります。この方法により、患者はリラックスした状態で手術を受けられ、時間の経過をほとんど感じることなく済むため、精神的な負担が軽減されるでしょう。
歯医者で使用する麻酔の副作用について
麻酔には効果的な痛みの軽減作用がありますが、副作用が生じることもあります。
鎮静剤の副作用
笑気麻酔ではめまいや吐き気、静脈内鎮静法では血圧の低下や呼吸抑制が生じることがあります。これらは治療後に徐々に回復することが多く、ほとんどの場合心配はいりません。
局所麻酔の副作用
注射部位の腫れやしびれ、アレルギー反応などがまれに発生することがあります。特に以前麻酔でアレルギーが出たことがある方は、事前に医師に相談しておくことが重要です。
全身麻酔の副作用
全身麻酔は、手術後に吐き気やのどの痛み、筋肉の痛みなどが引き起こされることがあります。重篤な副作用が発生するリスクもあるため、専門の麻酔科医による管理が不可欠です。
▶麻酔後の注意点については、次のコラムもご覧ください。 歯科治療で麻酔した後の注意点とは?副作用や効果があらわれにくいケースも解説
歯医者で使用する麻酔の種類を理解し安心の治療を
治療の痛みを心配する気持ちは自然なことです。麻酔には、それぞれの治療内容に応じた最適な使い分けがあり、専門の医師が細心の注意を払って管理することで、安全かつ快適に治療が進められます。
不安や疑問がある場合は、ぜひ医師に相談し、ご自身に最も適した麻酔方法を選んでもらいましょう。
筆者:seeker編集部