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2025/01/24
妊婦さんが知っておくべき歯周病と妊娠の関係とリスクを解説

妊娠中は、ホルモンバランスの変化や生活習慣の影響によって歯周病のリスクが高まる時期です。
ホルモンの影響により歯茎が炎症を起こしやすくなるだけでなく、つわりのために歯磨きが不十分になったり、食生活が偏ったりすることでリスクがさらに増大します。
この記事では、妊娠中に歯周病になりやすい理由とそのリスク、そして予防のためにできることについて解説します。
妊娠中に歯周病になりやすい理由
ホルモンバランスの変化
妊娠中には、体内で分泌されるホルモン分泌量が大きく変化します。特に、エストロゲンやプロゲステロンの増加は、歯茎(歯肉)に影響を与えることが分かっています。
このホルモンの影響で、歯茎が炎症を起こしてしまった状態を「妊娠性歯肉炎」と呼びます。
妊娠中期から後期にかけては妊娠性歯肉炎が進行して、歯茎が赤く腫れたり、歯磨き中に出血しやすくなったりすることがあります。この状態を放置すると、歯肉炎が悪化し歯周病へ進行する可能性が高まります。
歯周病が悪化すると、最終的には歯を支える骨や組織が破壊されるため、妊婦さん自身の健康にも影響を及ぼしかねません。
つわりによる歯磨き不足・食生活の変化
妊娠初期には、多くの妊婦さんがつわりに悩まされます。つわりにより吐き気が強くなると、歯磨きが億劫になったり、歯ブラシを口に入れることさえつらく感じる場合があります。その結果、口腔内の衛生状態が悪化しやすい時期です。
また、つわり中はさっぱりした炭水化物や糖分の多い食べ物を好む傾向があり、これも歯周病菌の増殖を助長する原因となります。
妊娠中の免疫機能の調整も、歯周病のリスクを高める要因です。妊娠中は免疫力が変化するため感染症にかかりやすくなるうえに、細菌に対する抵抗力が弱まるとされています。そのため、歯周病菌に感染しやすくなり、普段以上に炎症の進行が早い場合があります。

歯周病が妊娠状態に与える影響
歯周病は単に口内の問題に留まらず、全身の健康や妊娠状態に深刻な影響を及ぼす可能性があります。 妊婦さんと赤ちゃんの健康を守るため、歯周病が引き起こすリスクについて理解しておきましょう。
赤ちゃんへのリスク
妊娠中に歯周病が進行すると、赤ちゃんの成長や健康に深刻なリスクを及ぼす可能性があります。
歯周病が進行すると、歯茎の炎症によって細菌や炎症性物質が血液中に入り込みます。妊娠中の場合、血液中の物質は種類によっては胎盤を通じて胎児に影響を与えたり、胎盤の機能を妨げたりする恐れがあります。
例えば、炎症性物質は胎盤の働きを妨害するため、胎児の免疫システムの正常な発達が阻害される可能性があり、出生後の感染症リスクの増加や免疫不全に繋がることがあります。
さらに、胎盤の機能が阻害された結果胎児の組織形成が十分に行われなかった場合、将来的な健康問題や発達の遅れにつながる可能性も考えられます。
低体重児・早産のリスク
低体重児出生や早産の原因のひとつが母体の歯周病です。
歯周病が重症化すると、プロスタグランジンという炎症性物質が増加します。
この物質は子宮収縮を促進する作用があるため、本来の出産予定日よりも早く陣痛が引き起こされたり、胎児が2500g未満の低体重児という状態で生まれてしまったりする可能性があります。
低体重児は、例え正産期の出生でも生後すぐの段階では免疫機能が弱く、感染症や呼吸器疾患にかかりやすい状態です。また、子どもの成長後にも糖尿病や心血管疾患などの生活習慣病にかかる可能性が通常よりも高くなることがわかっています。
早産も赤ちゃんの健康にさまざまなリスクを伴うため、歯周病を予防・治療することは妊婦さんと赤ちゃんにとって極めて重要です。

定期的な歯科受診がおすすめ
妊娠中の歯周病予防には、日々の生活で実践できる対策と定期的な歯科受診が欠かせません。妊婦さん自身が積極的に口内の健康を守ろうとすることで、歯周病のリスクを大幅に軽減し、赤ちゃんの健康を守ることができます。
妊娠中期(安定期)は、歯科検診や治療を受けやすい時期です。このタイミングで歯科医を訪れ、口腔内の状態を確認してもらうことが重要です。
歯周病の兆候が見つかった場合でも、早期の治療で進行を食い止めることが可能です。妊娠中期に1~2回の歯科検診を受ける習慣をつけましょう。
妊婦さん専用のケアを行っている歯科医院であれば、より安心して治療を受けることができます。
妊娠中に歯科治療を受けることを不安に思う妊婦さんも少なくありません。しかし、妊娠中期であれば、適切な配慮のもとでほとんどの歯科治療を受けることが可能です。
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筆者:seeker編集部