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2024/03/07
マタニティ歯科とは?必要性やメリット・注意点、受診タイミングを解説
妊娠中は、さまざまなトラブルが起こりやすいといわれており、歯科領域においても例外ではありません。妊婦さんが妊娠中に起こりうるお口のトラブルの早期発見・早期治療を目的に「マタニティ歯科」を掲げている歯科医院もあるようです。 今回は、マタニティ歯科の概要や必要性を解説するとともに、メリットや受診タイミングについてもお伝えします。
マタニティ歯科とは?
マタニティ歯科は、歯科診療の専門分野として存在するものではなく、妊娠中もお口の健康を守ろうという活動のことを意味しています。 妊婦さんの体は、エストロゲンやプロスタグランジンといったホルモンの分泌量が通常と異なります。つわりによって嘔吐しやすくなったり歯磨きができなくなったりといった体調変化もあるでしょう。 このように妊婦さんの体は妊娠前とは異なる状態になるため、妊娠中ならではの歯科トラブルが起きるリスクが高まります。 妊娠に由来するトラブルを予防することに加え、早期発見・早期治療をするのがマタニティ歯科の目的です。
▶妊娠中に歯科チェックを行う「妊娠歯科健康診査」については、次のコラムをご覧ください。 妊婦歯科健康診査とは?目的や妊娠中の歯科トラブルについて解説
マタニティ歯科の必要性
前述した通り、妊娠中はエストロゲンやプロスタグランジンといったホルモン分泌の変化によって、お口の中や全身にさまざまな影響が出ます。 例えば、妊娠によってエストロゲンが増加すると歯周病にかかりやすくなるといわれています。歯周病が原因で増えるのがプロスタグランジンです。プロスタグランジンの分泌量が増えると、陣痛を引き起こしやすくなるため、早産のリスクが高まってしまいます。 また、妊娠中はだ液の分泌量が減るため虫歯にもなりやすい状態です。加えて、つわりで歯磨きが十分にできない場合は、さらに虫歯になりやすくなってしまいます。 このように妊娠とお口の中の健康は相互に関係しているため、マタニティ歯科の必要性は高いといえるでしょう。
マタニティ歯科を受診するメリット
マタニティ歯科にはさまざまなメリットがあります。
妊婦さんの健康を守る
歯の健康を守ることは、健康寿命に影響することが分かっています。そのため、歯のトラブルを引き起こしやすい妊娠期にマタニティ歯科を受けることは、妊婦さんの健康を守ることにつながるでしょう。 また妊娠中は、「妊娠性歯肉炎」や「妊娠性エプーリス」といった妊婦特有のトラブルが起こる可能性もあります。快適に妊婦生活を送るためにも、マタニティ歯科を受けるメリットは大きいでしょう。
▶歯の寿命や健康との関係については、次のコラムをご覧ください。 歯の寿命はどのくらい?歯を失う原因と対策、健康との関係を紹介
赤ちゃんへの虫歯菌感染を防ぐ
生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中には虫歯菌がいません。家族と生活する中で、だ液などを介して虫歯菌の感染が広がっていきます。 乳歯が生えそろうまでの間は、虫歯菌の感染をできる限り防いだ方がよいとされています。赤ちゃんへの虫歯菌感染を予防するためにもマタニティ歯科は有効です。 もちろんママだけでなく、パパやおばあちゃん、おじいちゃんなども歯科クリニックを受診するのがおすすめです。
▶妊婦さんが知っておきたい赤ちゃんの歯の話については、次のコラムをご覧ください。 プレママさん必見!赤ちゃんの歯は妊娠中から作られる
早産や低体重児出産のリスクをおさえる
虫歯や歯周病はお口の中で炎症が起こっている状態です。これらの炎症があると、プロスタグランジンの分泌量が増加します。 子宮を収縮させたり陣痛を引き起こしたりする働きのあるプロスタグランジンが多く分泌されることによって、早産や低体重児出産などのリスクが高くなってしまいます。 マタニティ歯科で、虫歯や歯周病を早期に発見、治療することで、早産や低体重児出産などのリスクをおさえられるでしょう。
マタニティ歯科を受診するタイミング
妊娠初期はつわりなどが原因で、器具を使った診療を受けるのが難しいこともよくあります。また妊娠後期はお腹が大きくなるため、長時間仰向けになれないこともあります。 マタニティ歯科の受診を考えている場合は、体調が落ち着きやすい妊娠中期を予定しておきましょう。 とはいえ、妊娠初期や妊娠後期であっても、お口やあごなどの顔周りで気になる症状がある場合には歯科医院を受診するのがおすすめです。 妊娠が原因ですぐに治療を開始することが難しい場合は、ひとまず応急処置だけしておくこともできます。気になる症状を放っておかず、歯科医院で相談してみるとよいでしょう。
マタニティ歯科で歯のトラブルを防ごう
お口の中の健康を守ることは、妊娠期を安心して過ごすためにも、出産後の健康を守るためにも大切です。妊婦さんはマタニティ歯科を上手に活用し、歯科トラブルを防ぎましょう。 マタニティ歯科に関する相談は、診療科目に「マタニティ歯科」を掲げていない歯科医院でももちろん可能です。かかりつけの歯科医院やお近くの歯科医院でぜひ相談してくださいね。
筆者:seeker編集部