熱中症や健康のために水分補給は大切だとよく聞きますが、歯科の観点ではただ水分を摂れば良いというわけではありません。水分補給が仇となり、むし歯を引き起こすこともあるのです。歯の健康を守る水分補給のために、日常の飲み物について考えてみましょう。

暑い日の水分補給

熱中症は命にも関わるので、水分補給が重要です。たくさんの汗をかくと体内のナトリウムが失われた状態になりますが、その時に水だけを飲むと、血液中のナトリウム濃度が薄くなります。

すると、運動能力は低下し、体温が上昇して熱中症を引き起こします。そうならないためには、ナトリウムを補えるように塩分を含む水分を摂ることが推奨されています。また、腸での水分補給を促す働きを持つ糖分も、熱中症予防には必要不可欠です。糖分を摂取すると、ナトリウムが効率よく吸収され、同時に水分も吸収されます。

しかし、この糖分が曲者なのです。水分補給にお茶を選ぶ人は少なくないでしょう。お茶は糖分を含まないのでむし歯のリスクは伴いませんが、タンニンという茶渋の成分によって、歯を着色させることがあります。

お茶を選ぶ時には、ポリフェノール（タンニン）の含有量が少ないお茶を選ぶことをおすすめします。緑茶やウーロン茶、紅茶はポリフェノールを多く含むため、歯が着色しやすいといわれています。一方、ほうじ茶や麦茶はポリフェノールが少ないとされるので、こまめな水分補給にはおすすめです。

食事代わりの飲料

食事代わりに飲む飲料も糖分を含んでいるものがあるため、注意が必要です。市販の野菜ジュースなどの多くは、飲みやすくするためにフルーツや砂糖が加えられているので、むし歯を引き起こす恐れがあります。

そのほかに、プロテインと食事を置き換えている人もいるでしょう。プロテインそのものには糖分を含まないものの、気をつけてほしいのがプロテインを溶かす飲料です。スポーツドリンクやジュースに溶かして飲んだ場合、むし歯のリスクを高めてしまいます。市販のプロテインドリンクも同様で、飲みやすくするために砂糖が加えられているケースは少なくありません。

野菜ジュースやスムージー、プロテインドリンクなどを食事代わりに摂ることは、一見ヘルシーに感じますが、実はむし歯リスクと隣り合わせなのです。毎日忙しくしていると、コンビニで野菜ジュースなどを買ってその場で飲み、出勤するようなこともあるでしょう。しかし、糖分を含んでいるという点では、野菜ジュースもそのほかのジュースも同様なのです。

水分補給とpHの関係

普段、健康なお口の中は中性（pH7）に保たれています。しかし飲料をお口に含むと、お口の中はむし歯になりやすい酸性に傾きます。pH5.5以下になると、歯の表面の脱灰（カルシウムやリン酸イオンが溶け出すこと）が始まります。

それぞれの飲料のpHは商品によって違いがありますが、おおよそ、下記程度といわれています。

時間が経つと、唾液の力でお口の中のpHは中性に戻るのですが、中性に戻るのを待たず、次々と糖分を含む飲み物を飲んでいると、お口の中は常に酸性に傾いた状態になり、むし歯になりやすい状態が続くのです。

むし歯にならない水分補給の方法

重要なのはむし歯の原因になるような飲料を飲んではいけない、ということではありません。前述した通り、熱中症予防には糖分が必要です。特に暑い日が続くと、シュワシュワとした刺激のある炭酸飲料や甘いジュース、スポーツ飲料水を欲することもあるでしょう。

また、糖分は身体にとって大切なエネルギー源でもあります。摂り過ぎるとむし歯につながるものの、脳を活性化するためになくてはならないものであり、極端に避けてしまうと集中力や体力の低下を招きます。注意すべきは、糖分の含まれた飲料を水の代わりに常飲したり、ちょこちょこ頻繁に飲んだりすることなのです。

糖分を含む飲料を飲む回数を抑えたり、時間を決めたりすることがむし歯にならないポイントです。そのほかの時間は、水やお茶など、糖分を含まない飲料を飲むようにし、むし歯のリスクを下げましょう。

また、糖分を含む飲料を飲んだ後には、歯をみがくことはもちろん、水やお茶で口をゆすぐことも効果的です。糖分を含む飲料の適時・適正摂取と、飲んだ後のうがいや歯みがきによってむし歯リスクを下げましょう。

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筆者：seeker編集部