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2023/06/06
歯の移植はできる?自家歯牙移植について
「自家歯牙(じかしが)移植」という治療があるのはご存じですか。自家歯牙移植とは、何らかの原因で抜歯したり、もしくは歯がなくなってしまったりした箇所に、自分の使っていない歯を移植する方法です。 今回は、自家歯牙移植の方法やポイント、成功のための条件、メリット・デメリットなどについて解説します。
自家歯牙移植とは?
自家歯牙移植とは、自分の口の中にある「あまった歯」を抜き、歯を失ってしまった部位へ移植して歯の機能を回復させる治療方法です。
ここでいう「あまった歯」とは、健康な親知らずや、骨に埋まっていて生えてきていない「埋伏歯(まいふくし)」、異常な場所に生えていて噛み合わせに関与していない歯のことをいいます。 失った歯を補うための治療方法としては、インプラントやブリッジ、入れ歯などを思い浮かべる方もいるでしょう。人工物を使用するこれらの治療方法に対し、自家歯牙移植では自分の歯を使います。インプラントやブリッジなどと同じように、歯を失ったときの選択肢のひとつとして自家歯牙移植も頭に入れておくと良いでしょう。 なお、自家歯牙移植に年齢制限はありません。一般的に若いほど歯周病などのリスクが低く治癒する力も高いため、自家歯牙移植の成功率も高まると考えられています。
※欠損した歯の治療法として、こちらの記事ではインプラントとブリッジを紹介しています。くわしく知りたい方は、ぜひご覧ください。 「ブリッジとインプラント、どっちがいいの?」
自家歯牙移植の方法とポイント
自家歯牙移植は外科手術です。麻酔後、移植する歯を抜いたら、すぐに歯を失った箇所に移植して縫合し、移植した歯を固定します。固定がうまくいかないと骨への結合ができなくなり、失敗となってしまいます。 また移植をスピーディーにおこなえるかどうかも重要です。抜歯から移植までに時間がかかってしまうと歯根膜が乾燥してしまい、骨と歯が結合できなくなってしまいます。 歯根膜とは、歯の根部分と骨をつなぐ繊維性の組織です。歯の根元部分を覆うようにあり、再生力が高い細胞が多く含まれています。この歯根膜が十分に機能できる状態で移植することが、自家歯牙移植の成功には欠かせません。
自家歯牙移植を成功させる条件
自家歯牙移植を成功させるには以下のようなことが必要です。
自家歯牙移植には状態の良い歯根膜の存在が不可欠です。そのほか、移植先の大きさや移植する歯の歯根部分の形状も大切です。 歯根部分が曲がっていたり複雑な形状になっていたりすると、移植しにくいだけでなく、歯根膜が傷ついてしまう可能性も高くなります。自家歯牙移植を成功させるには、移植する歯や移植先に複数の条件があることを知っておきましょう。
歯が固定されるまでの期間
個人差はありますが、移植した歯がしっかり固定されるまでに約3ヶ月~6ヶ月はみておきましょう。また自家歯牙移植した際は、状態確認やメンテナンスのために移植後も通院する必要があります。
自家歯牙移植した歯の寿命
移植した歯の寿命は、一般的に5年〜10年といわれています。天然の歯のように一生もつものではありません。 ただし、定期的なメンテナンスなどをおこなうことで寿命を延ばすことが可能です。とくに移植直後は、固形の食べ物を避けたり、うがいを最低限にしたり、手術後の専用歯ブラシを使って歯磨きをしたりなどを心がけ、歯がしっかり固定できるよう配慮しましょう。歯がしっかりと固定されれば、長持ちさせることもできるでしょう。
自家歯牙移植の費用
自家歯牙移植には、健康保険が適用される場合とされない場合があります。保険が適用されるのは、以下の両方を満たす場合です。
保険が適用される場合、自家歯牙移植そのものは1万円前後であることが多いです。けれども、移植だけで治療が完了するとは限りません。移植後に別の治療が必要になることもあります。その際は別途費用がかかります。 なお、上記の条件にあてはまらない場合は保険が適用されません。その場合、費用は10万円以上かかるケースが多いようです。
自家歯牙移植のメリットとデメリット
メリット
自家歯牙移植のメリットには、以下のようなことがあげられます。
デメリット
一方、自家歯牙移植のデメリットには以下のようなことがあります。あわせて知っておきましょう。
自家歯牙移植は難しい手術です。どの歯科医院でもおこなっているわけではありません。関心のある方は事前に歯科医院に問い合わせてみてください。
(seeker編集部)