コラム>歯の豆知識
2024/04/04
20代で起こりやすいお口のトラブル その原因と対策を解説
20代は生活スタイルや環境が変わることが多い年代です。今回はそんな20代で起こりやすいお口のトラブルを紹介します。その原因と対策についてもみていきましょう。
生活スタイルや環境の変化から起こりやすいお口のトラブル
むし歯
2022年の厚生労働省の調査で、20代の人のうち7割以上にむし歯がある、またはむし歯の経験があることがわかりました。10代では4割以下ですので、急激に増えていることがわかります。むし歯が増える原因として、次のようなことがあるでしょう。
高校生までは、学校で年に1回検診を受ける機会がありました。しかし、学校を卒業すると、歯の検診は自分で歯科医院に出向いて受けなくてはなりません。 日本歯科医師会が2022年8月に行った調査によると、20代では、6割以上が定期的に検診を受けていない、また3人に1人はかかりつけ歯科医がいないという結果になっています。 忙しい毎日を送っていると、「もしかしたらむし歯かもしれない」と思っても、つい歯科医院へ行くのを先延ばしにしてしまいがちです。痛みを感じてからの受診では、治療が長期にわたったり、治療費が高額になってしまったりすることもあります。歯科医院での定期検診を継続し、早期発見を心がけましょう。
▶参考資料 令和4年歯科疾患実態調査結果の概要 |厚生労働省 10代の2人に1人が口腔の問題を経験 |日本歯科医師会
歯周病
近年20代で歯周病になる人が増えています。歯周病が増えている原因として、次のことが考えられます。
生活習慣の乱れやストレスは免疫力を弱めます。免疫力が弱まると、歯周病菌が繁殖しやすくなってしまいます。 加えて、喫煙も歯周病菌が繁殖しやすくなる原因のひとつです。喫煙によりニコチンなどの有害物質が体内に入ると、血液中に十分な酸素がいきわたらなくなり、歯周病菌の増殖を促すことになってしまいます。 歯周病を防ぐ対策として、次のことを心がけましょう。
▶20代の歯周病が増えている理由や原因については、次のコラムをご覧ください。 20代の歯周病が増えている?歯周病になる原因と予防方法
歯ぎしり
歯ぎしりは眠っているときに起こることが多いため、自覚している人は少ないかもしれません。歯ぎしりの原因ははっきりしないことも多いのですが、主に次のことが考えられます。
ストレスや不安などの心理的要因をすぐに改善することは難しいかもしれませんが、下記のことに気をつけ、少しずつ改善していきましょう。
歯ぎしりがひどくなると、歯が欠損したり、首や肩に痛みが出たりすることがあります。とくに睡眠中の歯ぎしりは自分では気づきにくいものです。家族から指摘された場合は、歯科医院での診察を検討してください。
妊娠中に起こりやすいお口のトラブル
むし歯
妊娠中は、女性ホルモンの増加によりお口の中に細菌が繁殖しやすくなります。また、唾液の分泌量減少により、お口の中の自浄作用が低下しやすく、むし歯になりやすいです。 そのほかにもむし歯になりやすい理由として、以下のことが考えられます。
つわりで歯みがきをするのがつらいときは、次のような工夫をしましょう。
妊娠中もできる範囲でお口のケアを継続し、むし歯にならない生活を心がけましょう。
妊娠性歯肉炎
妊娠中は女性ホルモンの増加により「妊娠性歯肉炎」になりやすいです。妊娠性歯肉炎の主な特徴は、次のとおりです。
妊娠性歯肉炎は歯と歯の間にある歯肉にできやすいため、フロスや歯間ブラシなどもうまく使って清潔を保ちましょう。 妊娠性歯肉炎をそのままにしておくと歯周病へと進行してしまうこともあります。歯肉炎の段階できちんと処置をすることが大事です。
妊娠性エプーリス
エプーリスは、歯茎にできる「できもの」のようなふくらみです。妊娠中にできるエプーリスのことを「妊娠性エプーリス」といいます。 妊娠初期から中期にあらわれることが多く、歯と歯の間の歯肉が腫れて、さわると痛みや出血する場合もあります。出産後に自然に小さくなる、または消えてしまうことが多いので、切除などの治療はせず経過観察する場合が多いようです。 妊娠性エプーリスになると、ふくらんだ部分に歯ブラシを当てづらく、歯垢がたまりやすくなります。そこから歯周病にならないよう、丁寧なブラッシングを意識しましょう。
そのほか20代で起こりうるお口のトラブル
若年性歯周炎(侵襲性歯周炎)
「若年性歯周炎」は、10代から30代の若い世代で発症することが多く、歯垢の付着が少なくても急激に症状が進行してしまう歯周病です。「侵襲性歯周炎」ともいいます。 歯周病を引き起こす原因菌は何十種類も存在しますが、そのすべてが若年性歯周炎を引き起こすわけではありません。一部の特殊な歯周病菌が感染したり、免疫機能が著しく低下していたりする場合に発症することがあります。 過度に心配する必要はありませんが、進行が速く自覚症状がないことも多いため、定期的に検診を受けることが大切です。
親知らず
親知らずが生えてくる時期には個人差がありますが、10代後半から20代前半が多いようです。生えるためのスペースがなかったり、生える方向が真っ直ぐではなかったりすると埋没したままになることもあります。 親知らずの生える方向が悪いと、歯ブラシが届きにくくなるため、むし歯になりやすいことがあります。また、親知らずが部分的に歯肉に被さったままになっている場合は、歯肉に炎症を起こすこともあるでしょう。これらの場合は、抜歯をした方がよいかもしれません。 しかし、全ての場合において抜歯が必要というわけではありませんので、親知らずが生えてきたら、一度歯科医院でみてもらうとよいでしょう。
まとめ
20代は、多くの人にとって、生活スタイルや環境が大きく変わる時期です。毎日の口腔ケアを怠ってしまう人や、定期的な歯科検診を受けなくなってしまう人もいるでしょう。若さゆえの「大丈夫」という過信もあるかもしれません。 しかし、生涯自分の歯で食事を楽しみ、健康な体を保ち続けるには、お口のケアや歯科医院での継続的な検診が大切です。かかりつけ歯科医を持ち、お口のトラブルについて相談できる環境をつくっておきましょう。
筆者:seeker編集部