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投稿日:2025/06/18
更新日:2025/06/18
根面う蝕ってなに?歯の根元が茶色くなっていたら要注意!
歯の根元が茶色くなってきた、冷たいものがしみる…。それは、もしかすると「根面う蝕(こんめんうしょく)」かもしれません。高齢者に多いこの症状は、気づかないうちに進行し、歯の寿命を縮めてしまうこともあります。
この記事では、根面う蝕の基礎知識から原因、治療法、予防策までを解説します。
根面う蝕とは?
「根面う蝕」とは、歯の根元にできる虫歯のことです。通常、虫歯は歯の上部や歯と歯の間にできますが、根面う蝕は加齢や歯周病により歯ぐきが下がった結果、露出した歯の根元に発生します。
歯の根の部分にはエナメル質がなく、やわらかい象牙質がむき出し状態です。この象牙質は酸に弱く、むし歯菌の出す酸により簡単に溶けてしまうのです。
特に高齢者に多く、見た目では「茶色く変色している」「歯ぐき近くに黒ずみがある」といったサインが見られます。また、知覚過敏と誤解されやすく、放置されるケースも少なくありません。
▶歯磨きをしているのに虫歯になってしまう理由については、こちらのコラムをご覧ください。 毎日歯を磨いているのに虫歯ができる理由とその予防法

根面う蝕になる5つの原因
根面う蝕の発症には、私たちが日常生活で無意識に行っている習慣や、加齢による変化が大きいです。以下では、特に注意すべき5つの主な要因を詳しく解説します。
①歯肉退縮による歯根面の露出
歯ぐきが年齢や歯周病の影響で徐々に後退すると、本来歯ぐきに守られていた歯根面が外に露出します。この露出した部分は、エナメル質がなく、象牙質という酸に弱い柔らかい層で構成されているため、むし歯菌が出す酸の影響を受けやすい状態になってしまうのです。
②唾液分泌量の減少
唾液には、口腔内を洗い流し、むし歯菌の働きを抑える「自浄作用」や、歯を修復する「再石灰化作用」があります。これらは、歯を守るうえで欠かせない役割を果たしますが、加齢や薬の副作用、ストレス、脱水などによって唾液の分泌が減少すると、こうした防御機能が低下してしまいます。
③口腔清掃不良
歯の根元や歯間部は、歯ブラシが届きにくく、磨き残しが発生しやすい部位です。特に歯ぐきが後退して歯根面が露出している場合、プラーク(歯垢)がたまりやすく、虫歯のリスクが高まります。
④食生活の影響
頻繁な間食や甘い飲み物、酸性の食品(炭酸飲料・果物・酢など)の摂取は、口腔内を酸性に傾け、象牙質を溶かしやすくします。こうした酸性環境は、むし歯菌の活動を活発化させ、歯の再石灰化を妨げ、根面う蝕のリスクに繋がるでしょう。
⑤合わないかぶせ物・入れ歯
古くなったかぶせ物や適合していない入れ歯は、すき間に汚れが溜まりやすく、清掃が行き届かなくなる要因です。こうした状態が続くと、プラークの蓄積が進み、象牙質を溶かし、根面う蝕のリスクが大幅に高まります

根面う蝕の治療方法
根面う蝕は進行度によって治療法が異なります。早期発見と正確な診断が、歯を残すカギです。ここでは、症状の進行段階に応じた治療法を詳しく見ていきましょう。
初期の場合
初期段階は、歯の表面にわずかな変色やざらつきが認められるのみで、まだ穴があいていません。この段階では、フッ素塗布により象牙質を強化することで、再石灰化を促して治療が可能です。
加えて、日常のブラッシング指導や食生活の見直しによって、進行を防ぐ予防的アプローチが取られます。
中期の場合
虫歯が進行して歯に小さな穴があいた状態や、象牙質が削れてきた段階では、レジンと呼ばれる歯科用プラスチックでの修復が行われます。
色調が自然歯に近く、見た目も整えやすいため、審美面でも有効です。比較的軽度なため、麻酔をせずに短時間で処置が完了する場合も多いでしょう。
重度の場合
根面う蝕が神経まで到達し、痛みや腫れを伴う場合には、歯の神経を取り除く根管治療が必要です。
さらに、歯の構造が大きく失われている場合は、土台を作り、被せ物を装着して補う処置が行われます。状況によっては、歯の保存が困難と判断され、抜歯が検討されることもあります。
▶一般的な虫歯の初期症状については、こちらのコラムをご覧ください。 虫歯の初期症状と見つけ方:目視で分かるサインとは
根面う蝕の予防&再発防止策
根面う蝕は、一度治療しても再発しやすいという特徴があります。そのため、毎日のセルフケアと定期的な歯科医院でのチェックの両立が重要です。定期的な歯科検診を受けることで、初期の段階で異変を見つけることができ、簡単な処置で済ませられる可能性が高くなるでしょう。
また、フッ素入り歯みがき粉の使用は象牙質を強化し、むし歯菌の活動を抑える効果が期待できます。日常的に使用することで、歯の再石灰化を促し、根面う蝕の進行を防ぎます。ブラッシングの際は、歯と歯ぐきの境目を意識して、力を入れず優しく丁寧に磨きましょう。加えて、歯間ブラシやフロスを使って歯と歯の間の汚れを取り除くことも、根面う蝕の予防に効果的でしょう。
唾液の分泌を促すことも口腔内環境を整えるポイントです。キシリトール入りのガムを噛んだり、こまめな水分補給を心がけましょう。生活習慣の見直しも重要です。甘い間食や酸性の飲料の摂取頻度を減らし、バランスの取れた食生活を意識することで、根面う蝕のリスクを根本から下げることができます。

早期発見・定期検診で歯を守ろう
根面う蝕は見た目の変色や軽い痛みから始まり、気づかぬうちに進行する厄介な虫歯です。とくに高齢者は注意しましょう。日々のケアと定期的な歯科受診によって、多くのトラブルは未然に防げます。
「なんとなく歯の根元が茶色い気がする」「冷たい飲み物がしみる」と感じたら、迷わず歯科医院を受診しましょう。根面う蝕の治療は、早期であればあるほど簡単で、歯を残せる可能性が高まります。
筆者:seeker編集部


























