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2022/05/24
子どもの歯の本数が少ない場合は治療が必要?
乳歯・永久歯が生えない症状を「先天性欠損」、歯同士が結合している症状を「癒合歯(ゆごうし)」といいます。歯科医による長期的な治療計画が必要になるため、早期発見がカギです。
このように、「子どもの歯の本数が少ない」症状を持つお子さんが稀にいます。原因や治療方法について、詳しくみていきましょう。
先天性欠損とは?
何らかの原因により、生まれつき永久歯が生えてこない症状を「先天性欠損」といいます。「先天性欠如 」と呼ぶこともあります。 本来、個人差はありますが、生後半歳くらいになると乳歯が生え始め、3歳〜3歳半の誕生日くらいまでに20本全てが生えそろいます。永久歯については、6歳ごろに生え始め、12歳ごろには第三臼歯を除くすべての永久歯が生えそろうのが一般的です。 しかし最近では、乳歯の本数が足りない・永久歯が生えないといった、先天性欠損の症状を持つ子どもが増えているのです。 先天性欠損は、何らかの理由で歯の元となる「歯胚」が作られないことで起こります。乳歯にも永久歯にも見られ、1本もしくは2〜3本だけが欠損することもあれば、まれに10本以上欠損することもあります。 また、乳歯に先天性欠損があると永久歯も欠損することが多いと言われていますが、きちんと生えてくることもあります。反対に、乳歯が20本すべて生えそろっている場合でも、永久歯が欠損することもあります。
癒合歯(ゆごうし)とは?
癒合歯とは、隣同士の乳歯がくっついてしまい、他の歯より大きくなっている状態です。主に、前歯によく見られます。素人では判断することが難しく、歯科医による1歳半の定期検査で指摘されることが一般的です。癒合歯は、繋がってへこんでいる部分に歯ブラシが届きにくく、虫歯になるリスクが高くなります。 また、歯の根っこが大きくなりすぎているためうまく永久歯と交換されず、周りの歯並びに影響を及ぼす可能性があります。「癒合歯かな?」と思ったら、早めに小児歯科を受診しましょう。
先天性欠損になる理由
まだ理由ははっきり解明されていませんが、妊娠中の栄養欠如、全身疾患、遺伝、薬物の副作用といったことが考えられています。一説には、不必要になってきている歯が淘汰されてきているだけという説もありますが、まだよくわかっていません。
先天性欠損を早期発見する方法
歯科での定期検診の際にレントゲン写真を撮ることで、顎の骨の中にきちんと永久歯があるかどうか、乳歯の生え変わりが順調に進んでいるかどうかなどを確認することができます。乳歯が抜けた後、永久歯の本数が足りず歯と歯の間に大きな隙間がある状態が続くと、歯が動いたり傾いたりして、歯並びや噛み合わせ、発音などに問題が表れることがあります。
先天性欠損への対策
乳歯をできるだけ残す
乳歯の先天性欠如の多くは、顎の成長が落ち着いて矯正治療が可能になる頃までは、特に治療はせず様子を見ます。通常、乳歯はその下に生えてくる永久歯の成長とともに、破骨細胞によって歯根が吸収され、最終的には自然に抜け落ちます。 しかし、永久歯が足りない場合は、歯根の吸収が行われにくくなり、乳歯が抜けずに残ってしまう場合があります。そのようなときは、乳歯をできるだけ長く残すようにしますが、乳歯は永久歯に比べて虫歯になりやすく、歯根も短いので、大人になるまで残すのは至難の技です。そのため、家での歯磨きを丁寧に行うといった日頃のケアをしっかり続け、また定期的に歯科医院での診察を受ける必要があります。
矯正治療を行う
矯正治療を行うかどうかの判断のポイントは、顎のバランスや噛み合わせなど、歯の状況によって異なります。大体8〜10歳頃から初期治療を始めて、生えるべき永久歯が生えそろったら、残っている乳歯も利用しながら歯並びを矯正していきます。
インプラントや入れ歯で補う
はじめは乳歯をできるだけ残し、矯正治療で歯並びを整える治療を行いますが、途中で乳歯が抜けてしまったり、歯が何本も足りないときには、インプラントや部分入れ歯での治療に切り替えます。20歳前後で切り替えるのが一般的で、骨の成長が止まるのを待ってから、歯を補う治療法を検討します。
「先天性欠損」と「癒合歯」の原因や対策についてご説明しました。日頃から周りの大人の方がお子さんのお口のチェックを行い、永久歯への生え変わりについて知っておくためにも、定期的に歯科医院での定期検診をおすすめします。
筆者:seeker編集部