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2023/07/06
誤嚥性肺炎とは?歯科で予防できること
高齢者がかかりやすいといわれる誤嚥性肺炎。実は、誤嚥性肺炎と歯科は切っても切れない関係があります。 今回は、誤嚥性肺炎の原因や症状、治療法を解説するとともに、歯科における誤嚥性肺炎の予防策についてお伝えします。
誤嚥性肺炎とは?
誤嚥とは、食べ物や飲み物などが咽頭や気管に入ってしまうことで、誤嚥性肺炎は、誤嚥によって引き起こされる肺炎を指しています。 まずは、誤嚥性肺炎になる原因や症状、治療法について見ていきましょう。加えて、入れ歯を使用することによる誤嚥性肺炎のリスクについてもお伝えします。
誤嚥性肺炎になる原因
誤嚥性肺炎は、誤嚥によって口の中の細菌が気管に入ることで引き起こされます。 誤嚥性肺炎が起こるケースとして、食事中を思い浮かべることが多いかもしれません。ですが誤嚥性肺炎は食事中だけでなく、睡眠中にも起こりえます。寝ている間に、口腔内で増殖した細菌を含むだ液が気管に入ることで、誤嚥性肺炎になってしまうのです。
誤嚥性肺炎の症状
誤嚥性肺炎の初期症状は、風邪の症状とほぼ同じです。咳や発熱、痰のほか、元気がなくなったり食欲が落ちたりといった症状もあります。 ただの風邪症状と判断し治療せずにいると、症状が悪化することがあるので注意が必要です。38度以上の熱が続いたり、激しい咳が出たり、呼吸が苦しかったりする場合は、すぐに受診するようにしましょう。
誤嚥性肺炎の治療法
誤嚥性肺炎は、抗生物質を使った治療を行うのが一般的です。重症化した場合は、入院をしながら治療を行います。 治療がうまくいったとしても誤嚥をするリスクが高ければ、誤嚥性肺炎の再発を防ぎきれません。抗生物質による治療を行いながら、誤嚥を予防するためのストレッチや口腔ケアを身につけることが必要でしょう。
入れ歯で誤嚥性肺炎のリスクが高まる!?
入れ歯をしている人は、誤嚥性肺炎になりやすいといわれています。理由は、入れ歯に付着する細菌が「バイオフィルム」と呼ばれる物質を何層にも重ねて作り出すためです。 バイオフィルムは、入れ歯洗浄剤に対して防御機能があるため、全てのバイオフィルムを破壊して殺菌することが難しいといわれています。入れ歯を使用している人は口腔内の細菌が増えやすいため、その分、誤嚥性肺炎のリスクが高まるとされています。
▶入れ歯のメンテナンスについては、次のコラムをご覧ください。 入れ歯のメンテナンスは大変?お手入れ方法や、やってはいけない事を知っておこう
歯科における誤嚥性肺炎の予防方法
誤嚥性肺炎は、口腔内の細菌と密接な関係があります。そのため、口腔ケアをしっかりと行うことで、誤嚥性肺炎をある程度予防できるでしょう。 ここでは、歯科における誤嚥性肺炎の予防方法についてお伝えします。
口・のど周りの筋力アップ
誤嚥は、舌の筋力低下によって起こりやすくなるといわれています。 気管にモノが入らないように蓋をする「咽頭蓋」には、ほとんど筋肉がありません。そのため、筋肉の塊である舌が押したり引いたりすることで気管を開閉しています。 舌の筋肉が低下するとうまく気管を閉じられなくなるため、誤嚥が起こりやすくなります。舌の筋力を回復させることが誤嚥性肺炎の予防につながるでしょう。 また、口周りの筋肉を鍛えることで、食べ物や飲み物をきちんと食道に送り込めるようになります。口腔体操や舌体操を行うことが、誤嚥性肺炎の予防に効果的です。
日本歯科医師会のWebサイトにはさまざまな体操が紹介されています。参考にしてみてください。 オーラルフレイル対策のための口腔体操
毎日のセルフケア
誤嚥性肺炎を防ぐには、毎日のセルフケアで、口腔内を清潔に保つことも大切です。虫歯菌や歯周病菌などの細菌が多いほど、誤嚥性肺炎のリスクが高まるため、しっかりとケアしましょう。 セルフケアの基本は歯磨きですが、加えて、歯間ブラシやデンタルフロスを使って丁寧に歯垢を取り除きます。舌の汚れ(舌苔・ぜったい)にもたくさんの細菌が住み着いていますので、舌を傷つけない程度に取り除くようにしましょう。
▶舌のお手入れについては、こちらのコラムをご覧ください。 舌のお手入れが必要な理由とは?ケア方法を紹介
定期的な歯科受診
定期的に歯科受診をして、虫歯や歯周病を早期発見・早期治療することも、誤嚥性肺炎の予防につながります。また、定期的に歯のクリーニングを行うことで、セルフケアでは落としきれない歯垢や歯石を除去することもできます。 虫歯や歯周病の治療をしたり、歯垢や歯石を取り除いたりすることは、口腔内の細菌を減らすことになるため、誤嚥性肺炎の予防につながるのです。
定期的な歯科検診で誤嚥性肺炎を予防しよう
誤嚥性肺炎の予防には、口腔内の細菌を減らすためのケア欠かせません。口腔内の細菌を減らすには、毎日のセルフケアに加え、定期的な歯科検診や歯のクリーニングも大切です。誤嚥性肺炎を防ぐためにも、定期的に歯科を受診することをおすすめします。
筆者:seeker編集部