「インプラント」は聞いたことがある方でも、「ザイゴマインプラント」には聞きなじみがない方も多いかもしれません。

「ザイゴマ」とは「頬骨（zygomatic bone：ザイゴマティックボーン）」を意味する言葉であり、「ザイゴマインプラント」とは頬骨に長いインプラントを埋め込む治療法のことです。

今回は、ザイゴマインプラントの概要や特徴についてお伝えします。

ザイゴマインプラントとは？

通常のインプラントとのちがい

厚生労働省が提供するWebサイトによると、インプラントは以下のように定義されています。

通常、インプラント治療は顎骨に人工歯根を埋め込むため、埋め込むためのしっかりとした顎骨がないとインプラント治療はできません。

しかしザイゴマインプラントなら、頬骨に長いインプラントを埋め込むため、顎骨が少なくてもインプラント治療を行えます。

顎骨が少なくてもできる治療法「オールオン4」とのちがい

顎骨が少ない場合、インプラントをあきらめて入れ歯にするか、手術で骨を移植した後にインプラントを行うかのいずれかの方法が主流です。

骨の移植手術を避けたい場合は、「オールオン4」という、最低4本のインプラントで複数の歯を支える治療法が使われる場合もあります。ただしオールオン4においても、最低限の顎骨は必要です。

ザイゴマインプラントは、オールオン4の適用も難しいくらい、顎骨が少ない方でもできる治療法です。

ザイゴマインプラントのメリット

顎の骨が少なくても骨移植をせずに治療ができる

顎の骨が少ない方の場合、インプラント治療を始める前に骨移植が必要です。ザイゴマインプラントなら、顎の骨が極度に少なくインプラントをあきらめてきた方や、骨移植を負担に感じていた方でも治療できます。

手術当日に固定式の歯が入れられる

ザイゴマインプラントはインプラントを頬骨にしっかりと固定するため、手術当日に固定式の仮歯を装着できます。歯がない期間がないため、通常のインプラントに比べ、見た目はもちろん機能の面でも違和感が少ないでしょう。

合併症のリスクが軽減される

骨移植をした場合、手術後の細菌感染や副鼻腔炎のリスクが避けられません。さらに、移植した骨が定着するまでの数ヶ月は取りはずし式の入れ歯を繰り返し装着するため、傷口に負担がかかってしまいます。

その点、ザイゴマインプラントなら合併症のリスクや傷口への負担が少ないです。

ザイゴマインプラントのデメリット

治療できるクリニックが限られている

ザイゴマインプラントは高度な技術です。治療の際、麻酔科医も必要なため、治療できるクリニックが限られています。ザイゴマインプラントで治療したくても、近くに対応可能なクリニックがないケースもあるのです。

手術が長時間になる

ザイゴマインプラントは頬骨への手術となるため、通常のインプラント治療と比較すると手術時間は長くなります。

治療費が高額になる

ザイゴマインプラントは自由診療であり、保険は適用されません。治療には、高度な技術や知識のほか、ザイゴマインプラントを行える設備も求められるため、治療費は高めです。

治療費の相場については後ほど紹介します。

ザイゴマインプラントはどんな方に向いている？

ザイゴマインプラントは、顎裂や口蓋裂などで生まれつき上顎の骨が欠損している方や、ガンなどの病気で顎の骨を切除した方でも可能です。

また、重度の歯周病で顎骨がやせてしまったなどで顎骨が極端に少ないものの、骨移植を避けたいといった方にも適しています。

ザイゴマインプラントの流れと治療費

ザイゴマインプラントの流れ

ザイゴマインプラントを受けたい人は、まずザイゴマインプラントに対応しているクリニックに予約をとり、相談してみましょう。

クリニックではレントゲンやCTなどの各種検査を行い、その結果をもとに、治療の流れや費用など治療にまつわる詳しい内容を説明してもらいます。説明に同意したら手術です。手術時に固定式の仮歯を入れたら、その後、仮歯を調整しながら本歯の型取りをしてインプラントに装着していきます。

治療期間の目安は6～12ヶ月です。

ザイゴマインプラントの治療費

ザイゴマインプラントの治療費は、200～300万円が相場となっています。「オールオン4」に加算して金額を決めているクリニックも多いようです。

ちなみに、通常のインプラントは1本あたり30～50万円に設定しているクリニックが多く、本数が増えるごとに加算されます。

ザイゴマインプラントは高額ではありますが、これまで通常のインプラントができなかった方でも治療できる可能性があります。気になる方はまず、治療に対応しているクリニックを探して相談してみましょう。

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筆者：seeker編集部