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2023/10/17
口腔バイオフィルム感染症について
「口腔バイオフィルム感染症」は、2022年4月に新しく登録された病気です。まだ聞きなじみのない方も多いのではないでしょうか。 そこで今回は、口腔バイオフィルム感染症とはどのような病気なのか解説します。 口腔バイオフィルム感染症によって引き起こされる病気や検査、予防についてもみていきましょう。
口腔バイオフィルム感染症ってどんな病気?
「口腔バイオフィルム感染症」はどのような病気なのでしょうか?病気についてお伝えする前に、「バイオフィルム」について知っておきましょう。
バイオフィルムとは?
厚生労働省が運営するWebサイトによると、「バイオフィルム」は以下のように定義付けられています。
つまり「バイオフィルム」とは、複数の細菌と、細菌が作り出す物質からなる集合体のことです。 お口の中には、歯周病や虫歯の原因となる細菌をはじめ、多数の細菌が存在します。バイオフィルムの中では、細菌同士が栄養を分けあったり薬を効きにくくしたりするなど、お互いが連携して組織を作っています。 バイオフィルムは、とくに歯の表面や歯周ポケットの内側などに形成されることが多いようです。
口腔バイオフィルム感染症とは?
『口腔バイオフィルム感染症』とは、2022年4月に新しい病名として登録されたもので、バイオフィルムによって細菌に感染してしまった状態の総称です。 バイオフィルムは、細菌同士がバリアを作っているような状態であり、非常に強力なかたまりです。そのため、バイオフィルム内にある細菌には抗生物質などの薬物が効きにくく、さらに体の免疫システムも働きにくいという特徴があります。
口腔バイオフィルム感染症の症状
ここからは口腔バイオフィルム感染症の具体的な症状についてみていきます。
口腔バイオフィルム感染症が引き起こす病気
虫歯や歯周病をはじめ、口内炎や舌炎などは口腔バイオフィルム感染症に該当します。 口腔バイオフィルム感染症が引き起こす病気は、お口の中にとどまらず、以下のような深刻な全身疾患・症状を引き起こしたり症状を悪化させたりする場合もあります。
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口腔バイオフィルム感染症で全身疾患?その理由は?
なぜ、お口の中に存在するバイオフィルム内の細菌が全身疾患を引き起こすのでしょうか? たとえば、嚥下機能の低下などにより、バイオフィルム内の細菌が誤って呼吸器へ入ってしまうことがあります。呼吸器にバイオフィルム内の細菌が感染することで、誤嚥性肺炎が誘発され、場合によっては重篤な肺炎になってしまいます。 そのほかにも、お口の中に傷がある場合、その傷からバイオフィルム内の細菌が体内へ入ってしまうこともあるでしょう。このようなケースでは、血液中に細菌が入り込むことで、さまざまな症状を引き起こしてしまいます。
口腔バイオフィルム感染症の検査
口腔バイオフィルム感染症の検査には主に2種類あります。ここでは、口腔バイオフィルム感染症の検査と、検査に健康保険が適用されるのかどうかについてお伝えします。
口腔細菌定量検査(精密検査)
口腔バイオフィルム感染症を精密に検査する方法として「口腔細菌定量検査」があります。これは、厚生労働省が定める基準を満たした歯科医院でのみ実施できる検査です。 この検査では、「口腔内細菌カウンタ」という装置を使用して、お口の中の細菌数を測定します。細菌数が一定数以上なら口腔バイオフィルム感染症と診断されます。
舌検査(簡易検査)
口腔バイオフィルム感染症の簡易検査として「舌検査」があります。この検査では舌苔の状態を見て口腔バイオフィルム感染症かどうかを判断します。 健康保険の適用について障害がある方や訪問歯科診療を受けている方など、通院が難しい方が口腔バイオフィルム感染症の検査を受ける場合には、健康保険が適用されます。 障害がある方や訪問歯科診療を受けている方の中には、口腔内が著しく汚染されているケースが多くみられます。口腔内の汚染はさまざまな疾患につながりやすいです。 そのため、障害がある方や訪問歯科診療を受けている方を対象に、口腔バイオフィルム感染症の検査には健康保険が適用されます。
口腔バイオフィルム感染症の予防
バイオフィルムの状態になってしまうと自分で取り除くことはできません。そのため、日ごろからバイオフィルムができないようなケアが必要です。毎日の歯磨きはもちろん、歯科医院でも定期的にクリーニングをしてもらいましょう。 「口臭が気になる」「歯ぐきから出血する」などお口の中の違和感を覚えたら、口腔バイオフィルム感染症の可能性もあります。できるだけ早く歯科医に相談してみてください。
筆者:seeker編集部