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2023/01/26
歯と歯茎の間に隙間ができるのはなぜ?「ブラックトライアングル」とは

口元の見た目に関する悩みにはさまざまなものがあります。毎日人に見られる部分であるため「ささいなことだけど気になってしまう……」という人もいるのではないのでしょうか。今回は、審美的に目立つ症状のひとつである「ブラックトライアングル」の原因や改善法を紹介します。
ブラックトライアングルとは
ラックトライアングルとは、歯と歯の間と歯肉の間にできる三角形の隙間のことをいいます。歯肉が黒く変色しているのではなく、隙間が黒い三角形に見えることから「ブラックトライアングル」と呼ばれます。
ブラックトライアングルができる原因
歯列矯正
歯列矯正で歯並びが整うことで、ブラックトライアングルが生じる場合があります。歯並びがでこぼこしている状態のときには、歯と歯の間の歯肉が重なり隙間が目立たなかったものが、歯が正しい位置に戻ったことで歯と歯の間に隙間ができ、ブラックトライアングルが出現するのです。 また、矯正治療では矯正器具を歯に装着し、少しずつ歯に力を加えて歯並びを改善します。このとき、歯を動かすスピードに歯を支える歯槽骨の再生が追いつかないことがあります。そうなると歯茎が下がってしまい、ブラックトライアングルに繋がる場合もあるのです。

歯周病や歯肉炎
歯周病によって歯と歯肉の境目が深くなることも多いため、歯周病もブラックトライアングルの原因になり得ます。また、歯周病の治療を行うことによって、炎症を起こして腫れていた歯肉が引き締まり、ブラックトライアングルができてしまうこともあります。 しかし、ブラックトライアングルの出現を避けるために歯周病の治療を行わないのはNGです。歯周病がより進行し、最終的に歯が抜け落ちてしまうかもしれません。歯周病に気づいたら早い段階で治療することをおすすめします。
▶歯周病についてはこちらの記事をご覧ください もしかして歯周病?こんな症状に要注意
加齢
加齢もブラックトライアングルの原因のひとつです。加齢とともに代謝が低下し、歯槽骨や周辺組織の細胞活性が低下することで、歯茎が下がりブラックトライアングルが生じやすくなります。
歯磨きの習慣
歯磨きのやり方で、ブラックトライアングルを出現させやすくなってしまうこともあります。歯磨きの際に歯肉を傷つけてしまうと、炎症を起こし歯茎が下がってしまう場合があるのです。硬い歯ブラシで力任せにブラッシングをしている人はとくに気をつけましょう。
▶正しい歯磨きについてはこちらの記事をご覧ください オーラルケアの基本!歯みがきの方法や時間、歯ブラシの選び方を徹底解説!

遺伝や体質
遺伝や体質がブラックトライアングルの原因となることもあります。歯の形が四角形よりも三角形に近い人や、もともと歯槽骨や歯肉が薄い人はブラックトライアングルになりやすい傾向があります。
噛み合わせの影響
ブラックトライアングルのできやすさは、噛み合わせにも影響されます。食いしばりや噛みしめといった強い噛み合わせの力により、歯だけでなく歯槽骨や周辺組織が傷つき、ブラックトライアングルが形成されてしまうことがあるのです。
▶嚙み合わせについてはこちらのコラムをご覧ください 実はとても大切!噛み合わせが身体に与える影響とは?
健康への影響
ブラックトライアングル自体は病気ではないため、そのままにしておいても歯科疾患を引き起こすわけではありません。しかし、見た目や衛生面、発音などに影響を与える場合があります。ここからはブラックトライアングルがもたらす影響についてみていきましょう。
審美的な問題
感じ方には個人差がありますが、歯並びの状態は相手に与える印象に大きな影響を与えます。見た目を改善するために矯正治療を行い、ブラックトライアングルができた場合は、「せっかく見た目をよくしたのに…」というストレスに繋がることもあるかもしれません。
衛生上の問題
歯と歯の隙間に食べ物が挟まったり、歯磨きの際に磨きにくくなることで歯垢が溜まりやすくなったりするなど、虫歯や歯周病のリスクが高くなることがあります。
発音への影響
ブラックトライアングルの程度にもよりますが、会話時に歯と歯の隙間から空気が漏れてしまい、発音が不明瞭になる場合があります。
知覚過敏
歯茎が下がることで、その下にある象牙質が見えてしまいます。象牙質が露出することで、冷たいものなどがしみやすくなる「知覚過敏」が起きやすくなります。
ブラックトライアングルの改善方法
一度下がってしまった歯茎が自然に元の位置に戻ることはありません。けれども、できてしまった隙間を目立たなくすることは可能です。ブラックトライアングルを改善する方法について紹介します。
IPR
「IPR」とは「Inter Proximal Reduction」の略で「アイピーアール」と読みます。IPRでは、歯と歯の間にヤスリをかけたり部分的に削ったりして、歯の形を四角形に近い形に整えます。それによってできたスペースを埋める方向に歯を寄せることで、ブラックトライアングルを小さくすることが可能です。
ダイレクトボンディング
レジンというプラスチック素材を歯の表面に塗り重ね、歯の本来の色や形態を回復させる方法が「ダイレクトボンディング」です。 歯を削らずに短時間で修復できるという特徴があります。歯と歯の隙間を詰めたり、詰め物の変色を改善したりすることもできます。
ヒアルロン酸注入
歯茎下がりによってブラックトライアングルが形成された場合、ヒアルロン酸を歯肉に注入することで歯と歯の間と歯茎との隙間を埋めることが可能です。個人差はありますが、1回の注入で半年ほど効果が持続します。

ブラックトライアングルを予防するために
ブラックトライアングルの原因である歯肉の退縮が起きないようにするためには、歯垢を溜めないことが大切です。日頃から丁寧な歯磨きを心がけましょう。歯科医院で定期的に検診を受け、歯石を取り除いてもらうことで、歯肉退縮の予防にも繋がります。ぜひ積極的に歯科検診を受けてください。
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筆者:seeker編集部